一方、今回のガイドラインについて懸念する声もある。食品添加物は問題のあるものが多く、できるだけ減らすべきだと主張するのが日本消費者連盟。ガイドラインは、不適切な表示を規制するだけでなく、規制を恐れて事業者が適切な表示を自粛する懸念があるという。
そもそも、食品添加物の安全性はどう評価されるのか。国際連合食糧農業機関と世界保健機関の専門家会議が評価する。
具体的には、動物実験でマウスやラットに長期投与し、毒性が現れない量を調べる。これに安全係数(不確実係数)の100分の1をかけ、1日許容摂取量を設定する。安全係数は、人間とねずみの種差、人間同士の個体差をそれぞれ10倍とみて、それらを掛け合わせ100分の1とする。
日本消費者連盟・事務局の原英二さんは「人とねずみの種差が10分の1で収まるとは考えにくい」という。また、人間同士の個体差も、病気のかかりやすさなどをみても10倍で収まらないと主張する。
実際の安全係数の設定について、畝山さんはこう説明する。前提として、吸収・代謝・排泄の様子、遺伝子や妊娠への影響などを各種データでみて、問題はないと確認する。次に、長期の動物実験を複数検討し、最小の数値になるものを選ぶ。動物実験だけで決めるのでなく、体内に蓄積する傾向のあるものは排除する。複数の動物種を使って安全性には余裕を持たせているという。
さらに、人で個人差が大きいアレルギーなどには注意しているという。種差や個体差の10倍の数値は、これまでの研究で問題ないとわかっているとも指摘する。例外的に、胎児への影響などで10倍以上が望ましい場合があるかもしれないとの研究報告もあるが、ほとんどがある程度毒性のあることがわかっている農薬のケース。
日本消費者連盟はまた、食品添加物の指定品目数が急増していることも問題視する。
具体的には300台半ばで推移していたが、2000年代初頭に400台半ばに急増した。その背景に、原さんは「米国からの要求があった」とみている。
食品輸出拡大を狙う米国の“圧力説”について、前出の森田さんは「政治的な一面はあるかと思う。安全性に影響のない範囲で、基準を見直さざるを得ない」と話す。