食品添加物に漠然と不安を持つ人は少なくないだろう。消費者の不安や誤解を逆手に取ってビジネスチャンスにする事業者もいる。国は“不使用”表示の是正に動きだした。
【図表】食品添加物のガイドラインで「表示禁止」になる恐れのある10類型はこちら
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日本で代表的な食べ物の豆腐。大豆を原料に、豆乳を固めるのに凝固剤を使う。凝固剤には「にがり」が使われてきたが、使い勝手の良さなどから、塩化マグネシウムや硫酸カルシウムなどの添加物が使われることがある。
伝統的な和菓子はさまざまな着色料が使われ、見た目でも楽しませてくれる。こうした食品添加物は便利で、食生活を豊かにもしてくれる。
一方、調理に欠かせない塩や砂糖は、日本では食品となり、添加物でない。
「食品と添加物は境目があいまいで、法律で分けている」
と話すのは、国立医薬品食品衛生研究所の畝山(うねやま)智香子・安全情報部長。たとえば、寒天は一般の人が食べると食品だが、食品事業者が凝固剤のように使えば添加物になるという。
畝山さんは「食品は安全性を試験してから食べるものではない」と話す。きのこを採取して食べることは規制されておらず、個人が判断して食べるだけ。ただ、販売するとなると毒きのこの可能性もあるため規制される。
食品と違い、「添加物と農薬は規制されており、安全性は高い」と畝山さんは話す。安全なものだけ使用を認め、安全性の試験データもあるという。
添加物の安全性をみるうえで、物質の性質のほか、平均で1日どれぐらい摂取するのかなど、摂取量も重要になる。たとえば、添加物ではないが、塩は生きていくのに必要でも、とりすぎると高血圧などの病気になる。さらに、大学病院医療情報ネットワークセンターによると、体重1キログラムあたり0.5~5グラム、つまり60キログラムの人なら30~300グラムの塩を一気にとると死ぬ。
「水ですら5リットルを一気に飲むと死亡する可能性があります」と畝山さんは話す。
梅干しは保存処理をしないと腐り、かびが生えるため、昔から塩を使って保存してきた。畝山さんは「塩を使うよりも保存料を使うほうが減塩になる」という。