「切り身」ではだめだったのか?/GettyImages
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「大根役者」はなぜ大根なのか、「茶番」はお茶と何か関係があるのか……実はちゃんと意味があるのです。現在2021年7月号が発売中の朝日新聞出版『みんなの漢字』から14のうんちくを紹介します。※監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)

【「湯湯婆」ってなんて読む?読めそうで読めない漢字たち】

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Q コンブやワカメを「海草」と書いたら間違い?
A 花をつけないので「海藻」と書く

「海草」と「海藻」は、同じ意味で用いることもありますが、厳密には違います。ともに海に生息する植物ですが、「海草」が花をつける植物(顕花<けんか>植物)であるのに対して、「海藻」は藻類のことで、葉や茎、根の区別がはっきりせず、花をつけない植物(隠花<いんか>植物)です。ふだん私たちが口にするコンブやワカメ、ノリ、アオサなどはすべて隠花植物なので、「海藻」と書き表します。「海草」は、スガモやアマモなどが代表的です。

Q 演技が下手な役者を「大根役者」というのはなぜ?
A  どんなに食べても「あたらない」から

 大根は消化のいい野菜なので、どんなに食べても食あたりを起こさないといわれています。そこから、当たらない役者、つまりどんなに熱演しても客が入らない下手な役者のことを「大根役者」というようになりました。ほかに、大根は白いことから素人の「しろ」とかけたとする説や、下手な役者を表す「馬の脚」という言葉から大根を連想したとする説などもあります。

Q 「茶番」はお茶と関係あるの?
A お茶当番が演じた劇からきている

 江戸末期に流行した歌舞伎のパロディーを「茶番狂言」といいました。これは、お茶当番だった大部屋の役者が演じたことから、その名がついたといわれています。大部屋の役者は、自分の控室がない売れていない役者であり、そうした人たちが余興で演じたものなので、「下手な芝居、ばかげた振る舞い」を「茶番」「茶番劇」というようになりました。

Q スポーツの勝利に用いる「快勝」「圧勝」「完勝」はどう違う?
A 点差や試合内容が違う

「快勝」は、「見事に勝つ」「気持ちよく勝つ」という意味で、選手やチームが持ち味を発揮したうえで危なげなく勝つことを表します。「圧勝」は、「圧倒的に勝つ」「一方的に勝つ」という意味で、点差が開き、技術的にも差がある場合に用いられます。「完勝」は、「完全に勝つ」という意味で、「圧勝」ほど点差が開いていなくても、技術的に大きな差がある場合などに使われます。

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「切り身」だと縁起が悪いから?