めまいの原因疾患として最も多いのが「良性発作性頭位めまい症」だ。頭を特定の位置に動かしたときにめまいが発生するもので、中高年の女性に多い。不安になる患者も多いが、専門的な理学療法で改善することができる。
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めまいは、耳の病気が原因で起こる「末梢性めまい」と、脳の病気が原因で起こる「中枢性めまい」に大別される。
末梢性めまいの代表格が「良性発作性頭位めまい症」だ。頭を動かしたときに数十秒~数分続くめまいが生じる病気で、生命に関わる危険はないが、症状は激しく吐き気や嘔吐を伴うことも多いため、不安や恐怖を感じる患者も多い。この病気は、疑い例も含めるとすべてのめまいの約半数を占める。50~60代以降の女性に多く、男性より女性に約4倍近く発症するとされる。
この病気では、寝返りをうったとき、靴ひもを結ぶために前かがみになったとき、洗濯物を干すために上を見上げたときなど、頭を特定の位置に動かしたときにめまいが起こる。
耳の奥にある「内耳」には、からだのバランスを保つ働きを担う器官「耳石器」があり、耳石器には「耳石」という細かい粒がたくさん存在する。この耳石が耳石器からはがれ落ち、隣接する三半規管の中に迷入することがある。三半規管の内部は内リンパで満たされており、頭を動かすことによって、入り込んだ耳石が移動して内リンパに流れが生じる。そのせいで、頭が動いていないにもかかわらず、動いているという誤った情報が脳に送られるためにめまいが起こるのだ。
耳石が三半規管から排出されればめまいが治まることもこの病気の特徴であり、多くは30秒~1分程度で治まる。聖マリアンナ医科大学病院耳鼻咽喉科教授の肥塚泉医師はこう話す。
「何もしなくても、自然に耳石が移動してめまいが解消されることも多いですが、ずっと同じ姿勢でいるなど頭を動かさずにいると、長く続くこともあります」
■正しい診断が治療につながる
良性発作性頭位めまい症は中高年の女性に多く、加齢も要因のひとつだ。女性は閉経すると女性ホルモンの分泌が減少し、骨量が低下する。耳石の主成分は骨と同じ炭酸カルシウムであり、骨と同じように耳石ももろくなることで、はがれやすくなると考えられている。東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科教授の鈴木光也医師はいう。