獨協医科大学排泄機能センター主任教授の山西友典医師によれば、ひとたび過活動膀胱になると、急に尿意が起こり、漏れそうになったり、漏れたりしてしまう。水を触る、水の音を聞くといった刺激でも症状が起こりやすくなるという。
「患者さんの中には『ちょっとおしっこに行こうかな』と思い出しただけで膀胱が刺激され、尿が我慢できなくなってしまう方もおられます」(山西医師)
女性の場合、切迫性尿失禁と並んで多いのが「腹圧性尿失禁」。尿道を取り巻く骨盤底筋群の収縮が弱まり、せき、くしゃみ、大声で笑うなど腹圧が加わる動作を行ったタイミングで尿が漏れ出してしまう。骨盤底筋のゆるみは加齢とともに起こりがちだが、腹圧性尿失禁は妊娠・出産が原因で生じることも多く、若い女性にも見られることがある。
過活動膀胱の男女比はほぼ半々。ただし、初診の段階で「漏れ」を訴えるのは女性が多い。40~50代を境に、男性からの相談も増えてくるという。
「男性の場合は前立腺という臓器が尿道を塞ぎ、さらに外尿道括約筋(骨盤底筋)がしっかりと膀胱の出口を支えているため、尿漏れは女性に比べて起こりにくい。どちらかというと、『トイレが近い、間に合わない』という悩みが中心です。一方、女性の場合は尿道が4~5センチほどしかなく、その先の外尿道括約筋も薄いので、男性に比べ尿漏れが起きやすいのです」(同)
ヘルスケア関連製品メーカーのユニ・チャームが20代以上の成人女性2千人を対象にした「軽い尿もれ経験者調査」(2019年実施)では、「(切迫性、腹圧性を含む)尿失禁の経験はありますか」という設問に対して、30~34歳は3人に1人(34%)、50~54歳は2人に1人(50%)が「あり」と回答している。
尿漏れは一般的な現象と言えそうだが、家族や親しい知人に対して自身の状態を打ち明けられずにいる人は少なくない。前出の頼子さんも、これまで同世代の友人との間で尿漏れを話題にしたことはない。