
漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「silent」(フジテレビ系 木曜22:00~)をウォッチした。
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世の女子たちは聖地巡礼と称し、本作のロケ地・小田急線世田谷代田駅に集結中だとか。
ヒロイン・紬(つむぎ=川口春奈)は高校卒業後、恋人・想(そう=目黒蓮)から突然別れを告げられる。実は想は徐々に耳が聞こえにくくなる若年性の聴覚障害を発症していたのだ。
その事実を知らぬまま8年後。想の友人であった湊斗(みなと=鈴鹿央士)と交際中の紬は、ある日偶然想と再会する(これが世田谷代田駅前ね)。
この正統派ラブストーリーが、なぜここまでブレークしたのか。実は昨今の恋愛ドラマにありがちだった「キュン」の千本ノックには、みんな飽き飽きしてたんじゃ?
恋に落ちるイケメンはテンプレツンデレ属性。「壁ドン」「頭ポン」などの「キュン」要素でつなぐばかりの今日この頃。
まさに真逆のトーンで登場したのが本作だ。
現在と高校時代を行き来しつつ、丁寧に描かれるキャラクターと過去から連なるエピソード。「ドン」や「ポン」ではなく、言葉で紡がれる物語。
本作が描くのは「想いを伝える」ことだ。会話でも、手話でも、スマホやノートに綴られる文字でも、すべて「伝える」ということの大切さ。
伝わらないもどかしさ、せつなさ。伝わった時の喜び。その胸に灯るものこそ、まさに「キュン」てヤツじゃないですか。