サッカー・日本代表の監督だった、イビチャ・オシムさん。今年5月に亡くなった元監督を偲んで、元通訳の間瀬秀一さんが言葉を送る。
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「通訳の面接のとき、オシムさんとは全く話をしなかったです。『はじめまして』、そして『さようなら』だけです」
ジェフ市原時代に通訳を務めた間瀬秀一さんは当時を振り返る。間瀬さんがクロアチア2部のチームで引退を決め、次のキャリアを考えていたときのことだ。Jリーグで通訳の仕事ができたらと考え、履歴書を各クラブに送っていた。するとジェフ市原からクロアチア語通訳の打診があった。
「通訳の仕事が決まってクロアチア語の学校の先生に、オシムさんの通訳をすると話すと『あの、オシムの通訳をするのか』と驚いていました」
間瀬さんをさらに驚かすことがあった。現地のメディアでオシムさんがジェフ市原の監督になることが大きく取り上げられ、彼がかつて監督を務めたパナシナイコス(ギリシャの強豪クラブ)では通訳の問題があった、だからジェフでは通訳で失敗したくないとのコメントが報道されていた。
「それはもうプレッシャーでした。絶対失敗するなという意味ですから。オシムさんが代表の監督になりジェフを去るとき、なぜ自分を採用したのかを教えてくれました」