■神出鬼没で珍しく謎の多い魚
クサビフグが実際に口を左右に閉じるかどうかさえよくわかっていないという背景には、この魚が世界的にみても珍しい種であることに他ならない。クサビフグは世界中の温帯・熱帯海域に出現し、集団で座礁することもあるが、この時期にここに行けば漁獲できるという情報は全然集まっておらず、神出鬼没なマンボウ以上に謎めいた魚なのである。
漁獲が稀であるため、生きた状態での観察例が少なく、日本ではアクアワールド茨城県大洗水族館で、たった1日しか水槽で飼育できなかった。しかし、Youtubeには泳いでいる貴重な動画がある。それを見ると結構俊敏に泳いでおり、マンボウのようにはゆっくり泳がない可能性がある。そう考えると、もしクサビフグを飼育するなら、角のない大きめの円形水槽に入れる必要があるだろう。
マンボウ属やヤリマンボウ属は全長200 cmを超えることに対し、クサビフグはマンボウ科の中では小型種で、最新の知見では全長96 cmがこの種の世界最大記録となっている。私が知る限り、日本最大記録は全長56 cmだ。