「続いて名古屋です」
次に映し出された名古屋の街中の定点カメラの映像では、雨は小ぶりと言っていいくらいに弱まっていた。それでも水卜さんは、その現在の様子に加えて、今後雨脚の強まる可能性なども含めて注意喚起をする。
ただただ圧倒されて眺めている私の元にプロデューサーが近寄って来て、「いつもは明るく楽しく情報をお伝えするところなんですが、有事には一人でも多くの人の命を救うのが使命だと思ってやっているので」とその想いを伝えてくる。
ふと水卜さんを見ると、名古屋の定点の映像からの情報を伝え終わり、コーナーが移って画面から外れたところで、考えるように少し首を傾けて斜め上を見ていたかと思うと、ディレクターと目を合わせてお互いが近寄った。
「緊張感って今くらいでよかったのかな?」
水卜さんが質問する。
なるほど。
私ははっとした。
伝えるアナウンサーの緊張感は、そのまま受け取る側の危機感に直結する。
テレビを見ている人は今の状況がどのくらい深刻なのか、天気図のデータから判断するのは難しくても、伝えてくれる人の緊張感からは感じ取れる。
だから水卜さんは確認したんじゃないだろうか。
名古屋の定点カメラの映像では、雨も小降りで特に危機感を感じられなかった。
それでもしっかり注意喚起をしていた水卜さんだが、映像では雨が弱まっているだけにもっと緊張感を伝えた方がいいのか、今後の雨の予測も含め確認したんじゃないだろうか。
「いつもはもっとのんびりしているのに、すみません」
と数回こちらを気遣って笑顔で話してくれた水卜アナ。
私はむしろこのイレギュラーなバタバタの中で、プロの仕事を見させてもらったことを幸運だと思った。
それにしても圧倒されているうちに2時間があっという間に過ぎた。
帰宅したのは朝の9時。
わあー、1日を有効活用できるーーと思ったのも束の間、ソファーに倒れ込んで秒で寝落ち。
その後一日だるくて完全に無効活用となったのでありました。
■水野美紀(みずのみき)
俳優。ドラマ・映画・舞台で活躍中。<出演情報>NHK 特撮ドラマ「超速パラヒーロー ガンディーン」が6月26日、日本テレビ系ドラマ「ボクの殺意が恋をした」が7月4日にスタート。レギュラー番組は、フジテレビ系バラエティ「突然ですが占ってもいいですか?」毎週水曜22:00~、読売テレビ「水野美紀の映画生活(シネマライフ)」毎週金曜22:54~<関西ローカル> http://www.ytv.co.jp/cinemalife/
【書籍『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』好評発売中】