赤井さんといえば、すっかり俳優としての顔が有名だが、元々はプロボクサー。1989年、半生を綴った自伝を映画化した「どついたるねん」で、鮮烈な主役デビューを果たしてから、俳優としてのキャリアは30年以上。でもいまだに芝居には慣れないという。
「元々、鉛筆も持てない子ども時代から、本も読まない、漢字も知らない。そんな人間でしたから。大人になったからといって、作品に入って台本と向き合ってセリフを入れる作業は、ずっと必死です。ただ、台本は朝、昼、夜で読んだときに気持ちが変わることもあるし、本番になって相手がおったりしたら、また言葉の印象も変わってきます。それがおもしろいというか興味深いというか」
現場は好きだが、周りに迷惑をかけないで済むように、家では死に物狂いで準備する。今まで、「この役を赤井さんに」とオファーされて、スケジュール以外の都合で断ったことは一度もない。(菊地陽子 構成/長沢明)
赤井英和(あかい・ひでかず)/1959年生まれ。大阪府出身。元プロボクサー。引退後は俳優に転身し、88年デビュー。阪本順治監督の「どついたるねん」は、89年のブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第2位に輝いた。主に大阪ではバラエティータレント、東京では俳優として活躍。アマチュアボクシング指導資格を持ち、母校の近畿大学ではボクシング部の名誉監督を務める。
>>【後編/赤井英和「仕事を通して二つの快感を体験できて幸せ」】へ続く
※週刊朝日 2021年7月16日号より抜粋
こちらの記事もおすすめ 赤井英和「仕事を通して二つの快感を体験できて幸せ」