新型コロナウイルスワクチンの接種が各自治体で進められているが、避難所として開設予定の施設がワクチン集団接種の会場を兼ねていることもある。災害発生の危険性が高まったとき、自治体はそれをどう運営するのか。現場を取材した。
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今月7日早朝、島根県で線状降水帯が発生した。気象庁は「顕著な大雨に関する情報」を発表。出雲市では約11万人に避難指示が出され、市内16カ所の指定避難所が開設された。
その一つ、平田文化館(平田町)では避難者を受け入れながらも、ワクチンの集団接種が並行して行われた。
「この建物は十分に大きく、避難会場と接種会場との動線を分けて対応したと思われます」(出雲市新型コロナウイルスワクチン接種実施本部)
同市災害対策本部によると、平田文化館への避難者が少なかったこともあり、混乱などは報告されていないという。
梅雨どきの大雨だけでなく、夏から秋にかけての台風と、しばらくは水害の発生リスクが高い時期が続く。気がかりなのは、コロナ禍に豪雨災害時の避難所とワクチンの集団接種会場が重なる場合、それをどう運営するのか、だ。
■接種会場の大半が避難所に指定
昨年、九州では「令和2年7月豪雨」で熊本県内を流れる球磨川が氾濫。同県八代市における死者行方不明者は5人。建物522棟が全壊した。
特に山間の同市坂本町では濁流が住宅をのみ込み、甚大な被害が出た。その住民を収容するため、総合体育館(緑町)には4カ月間、避難所が設けられた。
現在、同市では総合体育館を含む4カ所で新型コロナワクチンの集団接種を行っているが、そのうち3カ所が避難所に指定されている。
今後、豪雨などで避難所開設が必要になった場合の対応を同市危機管理課の西村一章課長にたずねると、「その場合は、避難所を優先します。ワクチン接種の担当課ともすでに協議ずみです」と言う。
出雲市のように、ワクチン接種と並行して避難所を運営する可能性はないのか。