室井佑月・作家
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イラスト/小田原ドラゴン
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 作家・室井佑月氏は、コロナ禍で行われる東京五輪を「上級国民だけの祭典」と批判する。

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 7月5日配信の朝日新聞DIGITAL「【独自】開会式は無観客で調整 『五輪ファミリー』の観戦容認へ」という記事によれば、「政府は東京五輪の観客について、国立競技場で行われる開会式や大規模会場を『無観客』とし、それ以外の規模の小さな会場を条件付きで『有観客』とする方向で最終調整に入った。開会式で1万人程度とされる国際オリンピック委員会(IOC)などの関係者やスポンサーら『別枠』については、できる限り圧縮したうえで入場を認める方針だ」という。でも、「IOC委員などの『五輪ファミリー』や各国の外交関係者、スポンサーらは別枠として観戦を認める方向だ。開会式も入場できるようにする」なんだってさ。

 ん? つまり、東京五輪は基本、無観客で開催される。だけど、どうしても開会式やひいきするスポーツの試合を生で見たい「五輪ファミリー」がおる。だから、小さな会場を「条件付きの有観客」にし、あたしたちにそれでいいでしょっていいたいらしい。

 けど、これで納得できるか? 膨らみに膨らんだ東京五輪の開催費は3兆円を超えている。ざっと考えてあたしたちは1人3万円もの東京五輪の開催費を払わされることになる。6人家族なら、赤ん坊やお年寄りを含め18万円もの出費だ。

 新型コロナウイルスのせいで、生活が苦しい人は多い。貧困者や貧困スレスレになってしまった人をそっちのけで、上級国民だけの祭典に莫大(ばくだい)な税金を使っていいはずがないだろう。

 それに政府は、経済活動を再開できるよう、感染症対策をばっちりやった上で東京五輪を行おう、というのではない。五輪後の選挙のことしか考えていない菅首相が「とにかくたくさんの人にワクチンを」と音頭を取っていたが、それは五輪に間に合わず。てか、最近ではワクチンの数が足りなくなってしまった。いくら政府が感染症対策をやったところで五輪を開催したら、あたしたちが被るリスクは膨らむのだ。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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