そして近年、急速に比重が高まっているのが血管内治療だ。太ももの付け根などにある太い血管からカテーテルを通し、動脈瘤の中に極細のコイルをくるくると詰めていく「コイル塞栓術」と呼ばれる治療がある。頭を切開しないため、からだの負担が少なく、治療後の回復も早い。比較的高齢でも治療が可能だ。

 いずれの治療法を選択するかは、動脈瘤の大きさや場所、年齢、性別、健康状態、病院の考え方などによって決まる。

「発症したら頭をなるべく触らないほうがいいため、当院では治療の7~8割はコイル塞栓術でおこなっています。動脈瘤と正常血管の境界が不明瞭な場合や動脈瘤のサイズが非常に小さい場合など、血管内治療が難しい場合は開頭術になることもあります」(森本医師)

 コイル塞栓術は、動脈瘤に詰めたコイルの変形で瘤内に隙間が生じ、血液が再流入するなどして再治療になることもある。

 脳動脈瘤の場所によっては、開頭術のほうが有利な場合もある。

「こめかみの辺りにある中大脳動脈にできた脳動脈瘤の場合、血管内治療よりも開頭クリッピング術のほうが治癒率は高いという報告もあります。脳内出血を伴っている場合も、開頭術では動脈瘤の治療と同時に速やかに血腫除去もできるために開頭術にメリットもあります」(玉置医師)

 いずれも術後2週間は脳血管攣縮などの恐れがあり、集中治療室で慎重に管理される。軽症であれば3週間ほどで退院できるが、重症で後遺症が残る場合には、1~2カ月ほど入院後、リハビリテーション病院へ転院となる。水頭症という病態が併発すると、これに対する手術も必要になる。

■未破裂の治療は5ミリ以上から

 近年は未破裂脳動脈瘤が脳ドックや検査で偶然見つかるケースも増えている。その多くは無症状で本人に自覚はない。未破裂脳動脈瘤の発生率は成人の2~3%ともいわれている。発見される脳動脈瘤の半数以上は2~3ミリと小さいため、通常は経過観察となることが多い。10ミリを超す大型の脳動脈瘤は比較的まれだ。

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