

映画「17歳の瞳に映る世界」の全国公開が始まった。主演のシドニー・フラニガンとタリア・ライダーはアメリカでもっとも今後の活躍が期待される若手女優。監督は新鋭ヒットマン。アカデミー賞作品賞を受賞した「ムーンライト」のバリー・ジェンキンスがプロデューサーに名を連ねている。
オータム(フラニガン)は17歳。アメリカ・ペンシルベニア州の町に住んでいる。家族は母と義父と妹2人と犬。愛想がなく、ほかに友達もいないオータムにとって、唯一の友人が同じ学校に通ういとこのスカイラー(ライダー)だ。
ある日、エコー検査を受けたオータムは、妊娠していることを知る。しかしペンシルベニア州では未成年が中絶するのには両親の同意が必要。そこで彼女はスカイラーと一緒にニューヨークへ向かうバスに乗る。その旅の中で、彼女たちが常に向き合っている世界が浮き彫りになっていく。女性であることの痛みや機知、弱音を吐かない強がり、そしてただ寄り添うやさしさ。大都会に着いた2人は……。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
妊娠して中絶の旅に出た寡黙なヒロインと、付き添って旅をする明るく可愛いイトコ。台詞より繊細な観察力を駆使して少女たちの思いを表現しながら、答えを出さないまま妊娠させた相手は誰?と問いかけているようだ。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
閉鎖的な田舎町に無神経な男たち。2人のヒロインは、性格は違っても、環境に由来するような共通する醒めた眼差しや表情が強く印象に残る。だから言葉にしなくてもわかり合える。女性監督の繊細な感性と深い洞察が光る。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
世界中で同じ問題が起きますが、当事者の目に映る光景を描いたことで悲しみ、痛み、切なさに溢れます。色彩が主人公の気持ちをさらに代弁し、脳裏に焼き付いてしまう。主人公の年代に近い子を持つ親に知ってほしい。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
不安を抱えながらニューヨークの街中を移動する2人の胸中が強く伝わってきても、観る側は一挙手一投足を見守るしかできない。「生々しくもザラザラとした」という表現が当てはまり、これだけの強度がある映画は稀有。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年7月30日号