あと去年と違うのは打撃のパワーです。爆発的なパワーと打球速度、距離を生み出すテクニックを身につけた。ホームランを生み出すための打球の角度を意識した打法、独特のアッパースイングですね。今のはやりです。ただ、二刀流でこれだけの活躍をもう何年も続けるとは想像しにくい。27歳と、年齢的にも今が一番いいときだと思います。

 もし、大谷選手が花巻東から直接、海を渡っていたら100%、ピッチャーかバッターのどちらかに振り分けられていたはずです。日本ハム以外の日本のプロ野球チームに入団していても、おそらくそうなっていたでしょう。その意味では、大谷選手の二刀流を認めた日本ハム球団の育成方針があったからこそ、今の大谷選手の活躍があると断言していいと思います。個人的には、当初はいずれピッチャーに専念すると思いましたが、バッターとしてこれほどの成績を残すと、当然、人気面も考えて、いずれ大谷選手はバッターに専念することになるでしょう。

 後半戦の見どころですか? それはもう日本人初のホームラン王です。大谷選手は前半戦で両リーグトップを独走する33本。年間60本ペースです。過去に60本以上打った打者は5人いますが、うち3人(ボンズ、マグワイア、ソーサ)は、後に禁止薬物の使用が指摘された疑惑付きの記録でした。残る2人がルースと、61年に61本を打ったロジャー・マリスという選手です。

 ルースの記録は二刀流時代ではありません。20年にレッドソックスからヤンキースに移籍したルースは打者に専念してホームランを量産し始め、27年に前人未到だった60本のホームランを打ちました。大谷選手が二刀流をやりながらルースを抜けば、完全にルースを超えたと言っていいでしょう。今から楽しみです。(構成 本誌・佐藤秀男)

ふくしま・よしかず 1956年生まれ。中央大学時代に「アメリカ野球愛好会」を結成。卒業後は旅行会社に勤めながら評論活動を始める。著書に「大リーグ物語」(講談社現代新書)など

週刊朝日  2021年7月30日号に加筆

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