ただ、感染防止対策で、試合中に大声を上げられないことも敗因の1つだった。前日は自制していたが、それでも得点した際に無意識に声を上げると、審判から注意を受けた。及川と対戦した試合は声を出すことを自重したところ、躍動感が失われてリズムに乗り切れなかった。

 張本の実力は申し分ない。唯一無二の高速バックハンドを武器にチキータからの展開も得意とする。ただ技術だけを磨けば勝てるほど五輪は甘くない。まだ17歳と発展途上で、試合によって好不調の波もある。モチベーションを上げるためにも、「チョレイ」は心の拠り所だっただろう。ただ、注意されるリスクを考えると別の方法も考えなければいけない。

「元巨人の桑田真澄さんは現役時代にマウンドでつぶやくことで集中力を高めていました。日米で活躍したイチローさんの打席に入る前のルーティンや、元日本代表の五郎丸歩さんのペナルティーキック前のルーティンも心を整える所作の一つです。試合中なので長い時間は取れませんが、張本選手は参考になるのではないでしょうか」(スポーツ紙デスク)

 五輪で男子卓球史上初の金メダル獲得が期待される張本。「チョレイ封印」でも輝いている姿を見せてほしい。(安西憲春)