「南佳孝 松本隆を歌う~いつもこころに冒険王~」を師走に控える南さん(筆者撮影)
「南佳孝 松本隆を歌う~いつもこころに冒険王~」を師走に控える南さん(筆者撮影)

 今年は「南佳孝 松本隆を歌う Simple Song 夏の終わりに」がソールドアウト、ステージでの松本とのにこやかな握手が柔らかな絆を思い起こさせた。師走に追加公演「南佳孝 松本隆を歌う~いつもこころに冒険王~」を控えるが、昨年は松本隆作詞活動50周年の日本武道館の舞台にも立って『スローなブギにしてくれ』を披露、観客の大きなため息が出た後の万雷の拍手が忘れられない。

「デビューが決まってデモテープを録(と)っていたらそこに松本君が現れて、彼の麻布のマンションに遊びに行った。同じ学年で同じB型。ウマが合うんです。旅好きなのも同じ。どんな曲を作ろうかって話し合って、スペインなら夏の暑さやあのホテルが良かったとか。日本語で歌うんだけど、どこか見たことのない風景を探しました」

 そんな南と松本のやりとりにボードレールの詩集『パリの憂鬱(ゆううつ)』をイメージした。ボードレールは『松本隆 言葉の教室』を書いたときに再読した。

 そこに収められた「どこへでも此世の外へ」という詩を思い起こし、「南さん、それって『ここではないどこかへ』ですね」と口にすると、「そうだね」と頷(うなず)き、「夜中に無性に旅に行きたくなる気分になる時ってあるよね」

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。新刊「松本隆 言葉の教室」(マガジンハウス)が好評発売中

週刊朝日  2022年12月9日号

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