「ああ、ミュージカルの話、飛んだなと天を仰ぎましたよ。でもその後、リハビリの先生が『50歳になって、転んで膝折ったのにミュージカルやったら、超かっこよくない?』と(笑)。夢って、目標ですよね。絶対にあの舞台に立ちたい。その思いが原動力になって、痛くてつらいリハビリも乗り切りました」

 稽古期間中の約2カ月はお酒もやめた。「あのとき舞台でうまくいかなかったのは前日に飲んだからだ」とは絶対に思いたくなかったからだと言う。

「週8で飲んだくれていた人間ですよ。やめたのは自分でも信じられないけど、お酒で失敗するようでは舞台に失礼だなと」

 ただ、その稽古は「本当につらかった」と言う。キャストの中でミュージカル経験がないのは自分だけ。バラエティー番組では、リハーサルでは流れの確認だけで「本番でやります」が口癖だが、ミュージカルでは稽古場から全力。その違いからして戸惑った。稽古では演出家に「LiLiCoさん、日に日に身長が縮んでいくんですけど大丈夫ですか?」と心配されるほど、周囲に気を使った。

「そんなとき、ある舞台関係者が『舞台に上がったら(ビギナーも経験者も)みんな同じだよ』と。その言葉は大きかった。勇気をもらえました」

 公演は成功をおさめ、夢はかなった。今後もミュージカルには挑戦したいと考えている。

「何事も、20年がんばって初めて『がんばった』と言えると思う。今後もミュージカルを続けて、70歳でも役が来たときに初めて、『がんばった』と言っていいかなと思います」

 悩める50歳にエールを、最後にそうお願いすると「50でなぜ悩むの、まだ人生半分だよ!」と笑い、こう続けた。

「これまでの50年は貯金。その間にした失敗も含めて、それを生かしてやっと花を咲かせられる。そんな年齢だと思います。大切なのは、自分で考えて、『ちゃんと生きる』こと。そうすれば人生、素敵なことがたくさんある。これからですよ!」

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年8月2日号

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