自分のプログラムはもちろん、オープニングやフィナーレでも一挙手一投足が注目される立場。全力の演技で責任を果たすという思いが表れていた。
ここからは、実戦に向けての本格的な準備が始まる。他の選手たちが来年2月に控える北京五輪への思いを語ったなか、3連覇がかかる王者は異なる心境を明かした。
「(17~18年の)平昌シーズンみたいに絶対に金メダルをとりたいという気持ちはありません」
そして、こう続けた。
「ただ今季、必ず4回転半を決めるんだという強い意思はあります。しっかりと、その意思を、決意を持って、今季に臨みたいと思います」
これまで語ってきたように、最大の目標がクワッドアクセル(4回転半)成功であることを改めて強調し、五輪はその「道の中にあるのであれば」と話すにとどめた。
大技に向き合う現在の状況も説明した。
「体をいたわりつつ、アクセルの基礎の練習、一から4回転半に向けて作り直す作業をしっかりできたので、これから本格的に練習していきたいと思います」
新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、拠点のカナダに移動することはなく、昨季と同じように国内でコーチ不在のまま練習に励む予定だ。決して、簡単な道のりではないが、自信はある。
「昨季の経験を踏まえて、日本で一人で練習しても成長できると感じているので」
■リモートで振り付け
今季のショートプログラム(SP)は新しいものに取り組む。振り付けはリモートで行うという。
そして、フリー「天と地と」は継続し、その冒頭にクワッドアクセルを組み込むことを想定している。
昨季欠場したグランプリ(GP)シリーズにエントリーし、11月のNHK杯(東京)とロシア杯に出場すると決めたのも、この技を念頭に置いてのものだった。
「試合の機会がないと、やはり4回転半を決めても意味がないと思います。試合で決めたいという気持ちが強くあって、その機会を少しでも持てたらと思い、GPシリーズに出場させて頂くことに決めました」
何度も口にしたクワッドアクセルへの思い。昨季は「あと8分の1回転」で着氷できるところまで迫っていることを明かしていた。その差を埋めるのはどれだけ難しいことなのか。