羽生結弦が6年ぶりに「ドリーム・オン・アイス」に帰ってきた。出演を決めたのは、ファンへの熱い思いだという。繊細かつ全力の演技で、冒頭から観客を羽生ワールドに引き込んだ。AERA 2021年8月2日号では、北京五輪を控えた羽生選手の現在を取材した。
【写真特集】6年ぶりに帰ってきた! 羽生結弦「ドリーム・オン・アイス」
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羽生結弦(26)の「夢」に挑むシーズンが幕を開けた。
7月9~11日に横浜市で行われたアイスショー「ドリーム・オン・アイス2021」。羽生が口にしたのは、五輪3連覇ではなく、前人未到の大技への決意だった。
羽生がドリーム・オン・アイスに出演するのは6年ぶり。決め手となったのは、ファンへの思いだった。
「昨年はアイスショーがなくて、もっと皆さんの前で滑りたかった。昨シーズン、試合に出るたびに、演技することで誰かの役に立つんじゃないかと、何かを感じて頂けるんじゃないかと思いました。そういうことを少しでもやりたいと思い、出させて頂きました」
■激しい滑りに気迫十分
報道陣に公開された9日の公演。オープニングはTシャツとジーンズの爽やかな姿で観客の視線を集めると、大トリでの出番では一転、黒と赤の衣装を身にまとい、ロックナンバー「マスカレイド」を披露した。
「なかなか演じられる機会がなかったですし、大人になってもっと表現したいこともあって。客観的に感じてもらえることがこの世の中だからこそ増えたのではと思い、選びました」
冒頭から、その世界観に引き込んだ。滑り出しは勢いよく。その後の落ち着いた曲調のパートでは、繊細な指先の動きを伴う振り付けを見せる。
中盤に高さのあるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させると、滑りは激しさを増した。気迫のこもった表情を見せながらスピード感のあるスピンへ。手袋を氷上に投げてフィニッシュ。熱のこもった演技で、観客のスタンディングオベーションを浴びた。
終演の後、取材に対応した羽生はこのアイスショーに合わせて、入念に調整してきたことを明かした。
「かなり体を作って、焦点を絞って練習をしなければいけないと思っていました」