佐賀旭(さがあさひ)/ 1992年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科政治学専攻ジャーナリズムコース修了。2019年に日刊現代を退社後、「週刊現代」や「週刊朝日」を中心に記者として活動している
佐賀旭(さがあさひ)/ 1992年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科政治学専攻ジャーナリズムコース修了。2019年に日刊現代を退社後、「週刊現代」や「週刊朝日」を中心に記者として活動している

「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」

 連合赤軍事件からちょうど半世紀となる2022年は、この言葉を思い出さずにはいられない一年であった。

 2月にはロシア軍がウクライナに侵攻し、世界中に衝撃を与えた。数カ月で終結するだろうという楽観は、終結どころか今なお停戦の道筋を描くこともできない諦観(ていかん)へと変容し、核戦争の事態に発展しかねない危うさを抱え続けたまま、私たちは日常を過ごしている。

 同様の軍事侵攻が68年にも起きている。チェコスロバキアで起きた自由化運動「プラハの春」が断行されると、ソ連軍を中心とするワルシャワ条約機構軍20万人がプラハに侵攻し、軍事介入によって改革が阻止された。

 暴力に対してどのように向き合うかという問題は、遠い海外の出来事だけではない。

 7月8日に奈良市で参院選の演説中だった安倍晋三元首相が、山上徹也容疑者に銃撃され殺害される事件が起きた。

 山上の母親が旧統一教会に1億円以上の献金を行い、家庭崩壊をまねいたことが事件の背景にあるとみられている。

 信頼していた自国の政治家が、憎むべき旧統一教会と結びついていたことを知ったとき、山上は今の日本社会に心底絶望したのかもしれない。そしてこの硬直した日本社会を揺さぶる手段は、暴力によるテロリズムしか選択肢がなかったのではないか。

 旧統一教会の創設者である文鮮明は教会の関連団体として、反共産主義を掲げる「国際勝共連合」を設立している。旧統一教会がここまで組織を拡大することができた背景には、冷戦下において共産主義の危険性が吹聴されてきたことも一因だろう。

 連合赤軍事件での惨劇が社会に与えた、共産主義への嫌悪感や政治への絶望感も決して今回の事件と無関係ではないはずだ。

 連合赤軍事件は戦後日本の社会を語るうえで大きな分岐点となった。足を止め、50年前を振り返り、現在の日本社会を顧みたとき、若者たちの革命とその失敗から、また違った景色が見えてくるのではないだろうか。(本誌・佐賀旭)

週刊朝日  2022年12月9日号