この日の質疑応答で最初に質問したのは、幹事社の北海道新聞だ。冒頭から厳しい質問を連発した。

「首相は、先手先手で予防的措置を講ずると述べたが、逆に感染者は過去最多を記録した。このような事態になった理由と自らの責任についてお伺いしたい」

「オリンピックが開催される中で首相の自粛を求めるメッセージは乏しく、発信をしてもワクチンが効果を上げている内容ばかりであることが国民の危機感の欠如につながっているのではないか」

「首相は国民の命と健康を守ることがオリンピック開催の前提と発言したが、現在、国民の命と健康は守られているか。オリンピック、パラリンピックはこのまま予定通り開催するのか」

 質問を矢継ぎ早にたたみ掛けた。

 これに対し菅首相はいつもの”ガースー節”で回答した。

「増加の要因として指摘されるのはデルタ株の急速な広がり」

「ワクチン接種こそがまさに決め手であり、総力をあげて接種を進める必要があると考えている」

「オリンピックは、いま東京への交通規制、首都高の1千円の引き上げ、あるいは、東京湾への貨物船の入港を抑制するとか、テレワークもそうだが、そうした対応によって、人流が減少している」

「さらに抑制をするためにオリンピック、パラリンピックをご自宅でテレビ観戦をしていただけるように要請をしっかり行っていきたい」
 
 自らの責任や、いま国民の関心の高い東京五輪・パラリンピックの開催の可否については言及を避けた。

 さらには、ワクチンの効果ばかりを発言して国民の危機感の欠如につながっているのではないかと問われているのに、「ワクチン接種こそが決めて」と改めてワクチンの効果を強調した。この噛みあわなさぶりに記者席から大きなため息が出たほどだ。

 続くフジテレビからも厳しい質問が飛び出した。

「東京オリンピックを中止しない理由として、人流が減っていると述べたが、その認識は変わりないか」

「ワクチン接種も進み、人流も減っているのであれば、首都圏でここまで感染が急拡大することはないのではないか、という指摘もありますが、見解は」

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ピントがずれっぱなしの菅首相