地方国立大学の学生がどうやって世界と戦えるアスリートになったのか。同大学陸上競技部の川本和久監督による独自の指導が大きい。
川本監督は自著でこう話している。
「入学当初からすごい選手だったと思うかもしれませんが、実はそうでもありません。もちろん、才能も実力もありましたが、まだ荒削りで、走り方もきちんと習ったことのない子たちが大多数です。そんな彼女たちに教えることは、速く走るには、それなりの方法があるということです。『走ることとは』から始まり、力の伝え方やそのタイミング、そのための体の使い方の基本を頭にたたき込み、まずは理解させます。それを選手たちが、体の感覚として実感し、その精度を高めていくのです」(『福島大学陸上部の「速い走り」が身につく本』マキノ出版 2008年)
川本監督は筑波大体育専門学群出身で、1984年に福島大教育学部(当時)の助手、陸上競技部監督に就任した。91年文部省(当時)在外研究員としてアメリカ、カナダに滞在中、カール・ルイスのコーチ、トム・テレツから指導法を学ぶ。08年大会の5人出場以降、福島大の川本監督の名前は、全国の高校生アスリートに知れわたっていた。彼の指導を受けたいと、遠路、福島大を目指した学生も少なくなかった。
(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)
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