お馴染みの「ゲイ」「ホモ」「レズビアン」といったセクシャリティは、いわゆる「性対象が同性(男が好きな男性・女が好きな女性)」の人たちを指すもの。一方で「性自認」における性的少数者とは、例えば「男性の体で生まれてしまった女性」や「女性の体で生まれてしまった男性」、さらには「自分の本当の性別が肉体とは逆だと後天的に気付いた人」などのこと。この場合、彼らの「性対象」はまた別の話であり、中には「元男性の女性で、性対象は女性(レズビアン)」という人も存在します。
つまり「LGBTQ」には、本来分けて捉えるべき「性対象」と「性自認」が混在しているのです。「L(レズビアン)」「G(ゲイ)」「B(バイセクシャル)」「T(トランスジェンダー)」「Q(クエスチョン)」の中で、「性自認」関連のセクシャリティは「T」と「Q」です。ちなみに「Q」というのは、自分の「性自認」や「性対象」がまだ定まらない人たちのことを指します。
そして、新たな概念とも言うべき「ノンバイナリー」。一見「バイセクシャル(性対象が男女両方)」と混同しがちですが、違います。これはあくまで自分の性別について「男でも女でもない」という主張に基づくもの。
「何がなんだか分かんねぇよ!」とイライラしている人。焦らなくても大丈夫です。「世の中にはいろいろな形や指向の男や女、もしくはどちらにも属したくない人がいる」という事実だけをお留置き頂ければ。
それはそうと、ある程度の「枠組み」や「既成概念」に縛られることも生きていく上で大事なんじゃないかと感じる今日この頃です。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2021年8月6日号