ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、宇多田ヒカルさんについて。
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先日、宇多田ヒカルさんが「自分はノンバイナリーである」とSNSの生配信の中で発言しました。「ノンバイナリー」とは、自分を「男性」「女性」といった枠組みに当てはめないセクシャリティ(性にまつわる分類)のことだとか。
宇多田さん曰く「性別や婚姻状態(ミセスorミス)で認識されることに違和感がある」そうで、要は「私は男でも女でもない」と自身を形容したわけですが、正直私は「ノンバイナリー」の概念について、まだ理解が追いついておらず、歌姫の突然の告白にはかなり戸惑ってしまった次第です。昨今は日本でも、性的少数者を「LGBTQ」などと呼ぶ習慣がだいぶ浸透してきました。しかし、それらの頭文字が何を意味するものか、また「セクシャリティとは何ぞや?」と疑問を抱いている人も少なくないでしょう。
そもそも「セクシャリティ」にはふたつの要素があります。ひとつは「自分自身のことをどちら(男か女)の性で認識しているか」。これを「性自認」と言います。もうひとつは「自分の性的対象は男なのか女なのか両方なのか」。これを「性対象」と言います。私の場合、「性自認→男」「性対象→男」なので、LGBTQの中では「G(ゲイ)」に該当します。「あれ? ミッツって女装しているんだから、性自認は女じゃないの?」と思うかもしれませんが、私は「自分が男性(オス)である」と違和感なく認識した上で女装をしている「男好き」。ややこしくてごめんなさいね。