誕生日を忘れられ、当日の夕方に「ケーキ食べたかったら自分で買ってきて」とメールが来るなど、健吾さんにとっては「ないがしろにされている」と感じるできごとが続いた。健吾さんは趣味のツーリングサークルで一緒に活動している女性に、ついLINEで愚痴ってしまった。そのやりとりを、妻が見た。

「何にもやましいことがないから、スマホをそのへんに置きっぱなしにしていたんです。でも、妻は『これは浮気だ、離婚したい』と。このくらいのことで離婚だなんていやだって言ったんですけど、聞く耳をもちませんでした」

 ここまでは健吾さんの主張だが、当然ながら、妻側にも言い分はある。妻・夏希さん(仮名・39歳)の主張を審判の陳述書等から再現した。

 夏希さんは介護職で、7歳の子どもの母親である。8年前に健吾さんと結婚して以来、夫婦で協力し合いながら共働きを続けてきた。

 それなのに。ある日、夏希さんが仕事から帰ると、家にいるはずの夫と子どもがいなかった。しかも、夫と子どものものもほとんどが持ち出されていた。

「驚いて、すぐに警察に通報しました。警察官は、夫と子どもの居場所を確認してくれましたが、事件性がないので介入できない、どこに誰といるかも教えられない、と。まだ幼い子どもを連れて行かれ、居場所もわからず、私は大きなショックを受けました」(陳述書より)

 夫婦仲は悪かった。というのも、1年ほど前から夏希さんは夫の浮気を疑っていた。夫はツーリングを趣味にしていて、その仲間の1人である女性と親密な付き合いがあったようなのだ。

「夫のLINEを見たところ、性行為をにおわせるようなやりとりがありました。夫に聞いたら、夫は私の話を聞かず『何もない!』と怒鳴りました。その後も誠意のある回答は得られませんでした」(同)

 お金のことでも、不満があった。夫は住宅ローンの支払いはしてくれていたものの、家に入れる生活費は5万円。ボーナスからの追加もあったが、夏希さんとしては、もう少し家計に貢献してほしかった。光熱費や通信費、食費、子どもの教育費などで生活費がかさむため、自分の出費のほうが多いと夏希さんは感じていた。

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食い違う夫婦の主張