一方、妻は子育てを負担に感じているように、健吾さんの目には見えた。
「いつもイライラしていて、しんどそうでした」
時短勤務で夫の協力があるとはいえ、仕事をしながらの子育ては確かに大変だ。
「妻は『早く夜勤をしたい』と。子どもが生まれる前は、週に1~2回ほど夜勤があったんです。夜勤の日は朝、子どもを保育園に送って行ったら少し寝て、夕食の支度をしてから仕事に行くなど自分のペースで過ごせるから、少し楽だと言うんですね。夜は入所者が寝ているので、昼間ほど忙しくないのもいいと言っていました」
時短勤務で日勤だけだと、仕事の中心が後輩のヘルプや雑用になりがちなのも、プライドの高い妻には我慢がならないようだった。
「よく愚痴っていましたね」
子どもが3歳になり、妻は早速夜勤を始めた。
健吾さんは、それまで以上に子育てを担うことになった。妻が夜勤の日はもちろん、そうではない日も毎晩、お風呂に入れ、歯磨きをして寝かしつける。
「僕がお風呂に入っている間、妻が食事の後片付けとかしてくれていたんです。それはありがたいことなんですけど、子どもが『ママとお風呂に入りたい』と言うことがあって、『僕が片付けるから、一緒に入ってあげてよ』と言っても、『いい』と断る。なんかお風呂は1人でゆっくり入りたい主義らしくて。そんなことが続くうちに、子どももママとお風呂に入りたいとは言わなくなりました」
休みの日に遊びに連れて行くのも、ほとんど健吾さんの役目だった。
「僕は土日が休みなのですが、妻が土日に休めるのは月に1~2回で、あとは平日が休みなんです。家族がそろう貴重な休みに公園とかに誘っても、なかなかいい返事が聞けず。僕は子どもを外で遊ばせたいほうなので、結局、僕1人で子どもと遊んでいました」
そんな生活のなかで、どうしても子どもは健吾さんに懐きがちになる。
「それはそれで、気に入らないらしくて。子どもが小学校に上がったあたりから、子どもに対する当たりがキツくなり、僕に対する態度もぞんざいになってきました」