「舌痛症の原因はまだよくわかっていません。しかし、不安やストレス、性格などが複雑に関わっており、中枢神経系の過敏化や神経障害性の痛みの可能性も考えられています」(同)

 舌痛症は一般的な鎮痛薬が効かないことが多い。和気歯科医師は、1992年に東京医科歯科大学歯学部附属病院で精神科医とともにリエゾン(連携)外来を開始した。こうした中で認知行動療法などの精神療法のほかに、抗不安薬や抗うつ薬、また、漢方薬などが効果のあることがわかってきたという。

「お話をしっかり聞いて、必要な検査をして安心していただくことで、薬を使わなくてもよくなる人もいます。一方、薬が必要な患者さんで、抗うつ薬などに抵抗を感じる人に対しては、漢方薬を使う場合があります。舌痛症の患者さんは疲労や不眠、不安を訴えることが多いので、体力を回復させると同時に、心の不調をやわらげる漢方薬が選択肢となります」(同)

 加味逍遙散(かみしょうようさん)がその1つだ。

 50代の女性は、歯科医院で入れ歯を作った後から舌の痛みがあらわれるようになった。また、別の歯科医院では「舌に異常はなく、原因がわからない」と言われた。和気歯科医師があらためて診察と検査をした結果、舌痛症と診断された。

「女性はすでに心療内科から抗うつ薬を処方されていて、効果は得られていませんでした。そこで、加味逍遙散を追加したところ痛みが改善し、疲れやすい、肩こり、手足の冷えやめまいなどもよくなっていきました。しかし、漢方薬にも副作用がありますので、担当医とよく相談してから用いることが大切です」(同)

 近年、増えているといわれているのが「咬合(こうごう)違和感症候群」だ。その多くは歯科治療などをきっかけに、実際にかみ合わせが悪い場合やあごを支える顎(がく)関節、筋肉の状態が悪い場合に発症するかみ合わせの違和感だ。詳しく検査をおこなっても原因が見つからないものが一部存在する。

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