保管場所はダイニングテーブルのような、家族がよく座る場所の近くがいい。一番手に取りやすい腰から目の高さの“ゴールデンゾーン”に置けば、片付け忘れたものをすぐにしまうことができるので、部屋が散らかりづらくなるという。

 さらにもう一つ、大人のお道具箱とともに自宅のワークスペースで活躍するものがある。“家族のお道具箱”だ。

「ホッチキスやハサミなど、家族で共用する文房具の収納には、無印良品の持ち手付きのキャリーボックスが便利。道具一式を簡単に持ち運べます」

 中山さんのアドバイスを受け、記者もカバン収納法をさっそく試してみることにした。

 現在、在宅ワークと出社の比率は半々で、よくカバンから仕事道具を出し入れしている。

 まず、カバンの中に常に入っている持ち物を改めて点検してみると、全部で九つあった。ノートパソコン、マウス、手帳、財布、ペン入れ、モバイルWi‐Fiルーター、家の鍵、定期入れ、ICレコーダーだ。どれも個別にケースに入れているが、中山さんいわく「小さい収納に個別にちまちま入れていると疲れちゃう。全部ひとまとめにしておくと便利」。そこで、ケースから取り出し、ネットで見つけたポケット収納が八つあるPCケースにすべて移し替えた。そして、PCケースごといつものカバンに入れた。

■入れ替えは5秒で完了

 数日を過ごし、これまでとの違いをとくに実感したのは、在宅ワーク時の部屋移動だ。記者は自宅に仕事部屋がないため、原稿はリビングで書き、オンライン会議をする時だけ子ども部屋を借りている。この部屋移動が驚くほどスムーズになった。

 これまでは右手にコーヒーを持ち、左手にはノートパソコンをお盆にして、マウスやICレコーダーなどの機器を載せてそっと階段を上っていた。それが、PCケースに放り込んで、カバン収納してしまえば、両手がフリーになる。左手に気を取られてコーヒーをこぼすこともない。

 出社前の準備時間も大幅に短縮された。個別にケースに入れていた時は、すべての仕事道具をかき集めて、忘れ物がないかチェックしてからカバンに入れていたため、2~3分かかっていた。カバン収納ならPCケースを入れるだけなので、5秒で終わる。毎日のこの差は大きい。

 だが、何より大きかったのは、リビングに仕事道具を広げっぱなしにすることで生じていた家庭不和が、ほんの少しだけ和らいだことだ。平和にリモートワークをしたい人はぜひ試してみてほしい。(編集部・藤井直樹)

AERA 2021年8月9日号

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