チームとしては4位からの巻き返しを図るソフトバンクが戦力を整えてきた印象を受ける。投手陣では高橋礼と甲斐野央の2人が復帰し、登板を重ねているのが大きなプラス要因だ。特に長期離脱となっていた甲斐野はフォームこそ少し変わったものの、150キロを優に超えるスピードは健在。8月5日の巨人戦では1イニングを三者連続三振と完璧な投球で復調を印象付けている。野手ではBCリーグの茨城から7月下旬に加入したばかりのアルバレスが一軍初出場となった7月27日のDeNA戦でマルチヒットでデビュー戦を飾ると、8月4日の巨人戦では初ホームランも記録するなど持ち味のパワーを発揮している。阪神から加入した中谷将大、怪我から復帰したデスパイネの2人も力強いバッティングを見せており、得点力のアップも期待できそうだ。
一方でコロナ禍ならではの不安要素も散見される。メヒア(西武)、ロメロ(オリックス)、レイ(ソフトバンク)が家族との時間がとれないことを理由に相次いで退団を発表。シャッケルフォード(DeNA)も同様に現状の不安を訴えている。また7月末には唐川侑己(ロッテ)が発熱の症状を訴え、新型コロナウイルスの陽性判定を受けており、選手への感染もまだまだ起こる可能性はある。昨年はロッテ、今年は西武などで陽性者が目立つが、優勝争いの真っただ中で同様のことが起きた場合はその影響は計り知れない。目の前の敵だけではなく、目には見えないウイルスという敵ともどう対応するかというのは、ペナントの行方を占ううえでも重要なポイントとなることは間違いないだろう。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員