「別れたとしても、別れるまでに楽しいことがいっぱいあったらそれでいいのにね」(湊斗)(4話から) (c)フジテレビ
「別れたとしても、別れるまでに楽しいことがいっぱいあったらそれでいいのにね」(湊斗)(4話から) (c)フジテレビ
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 今クールの話題を独占しているといっても過言ではないドラマsilent」。登場人物たちのリアルなやりとり、胸に刺さるセリフ、あふれ出る涙……。私たちはなぜ“silent沼”にハマるのか、その理由を探った。AERA 2022年12月5日号より紹介する。

【写真】「silent」の名場面はこちら(全6枚)

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 フジテレビ系「木曜劇場」で放送中のドラマ「silent」(毎週木曜22時~)が人気だ。

 民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」における配信後1週間の見逃し再生数は、第1話で443万と過去に配信された民放全ドラマの歴代最高を記録。第4話では582万とさらに記録を更新した。

 一体なぜこんなにも人気を集めているのか。

 あらすじはこうだ。高校時代に恋人同士だった青羽紬(あおばつむぎ)(川口春奈)と佐倉想(そう)(目黒蓮[Snow Man])。大学に進学後、突然別れを告げて姿を消した想だったが、8年後に再会すると彼は聴覚を失い、音のない世界で生きていた──。

「ここで奈々(夏帆)が車にひかれるでしょう!と思ったけど、ひかれなかったから逆に驚きました。韓国ドラマなら、交通事故が起きて想が病院に駆けつける、という展開のはず」

 11月10日に放送された6話を観た後で、そう話したのはドラマファンの40代女性。近年はNetflixで韓国ドラマばかり観ていたという。ジェットコースター的に展開する韓ドラのストーリーに慣れてしまった今、何も起こらない「silent」が逆に新鮮に感じるという。

「知らないうちに、刺激に疲れていたのかもしれません。『silent』の低刺激が心地いい」

 と女性は自らを分析した。

手話教室に通い、覚えた手話で自己紹介する紬だったが、想はすでに「知ってる」ことばかり(2話から) (c)フジテレビ
手話教室に通い、覚えた手話で自己紹介する紬だったが、想はすでに「知ってる」ことばかり(2話から) (c)フジテレビ

■微妙な心の動きを描く

「このドラマ、大きな事件が何も起こらないのがいいな。大切な人が聴力を失ったら、自分もああいう反応になると思う」

 1話と2話を観た後、そうツイートしたのは法政大学社会学部教授でテレビドラマの物語論的分析が専門の藤田真文さん。

「次々と危機になるジェットコースター・ムービーとは逆の意味でストーリーの次の展開が予想できないドラマです。脚本の生方美久さんは、ポジティブ・ネガティブに大きく振れることなく、微妙に移り変わる登場人物の心の動きに沿って、ゆっくりと進む物語を作っているのでしょう」

 と藤田さんは言う。

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