既に誰もが知っている作品であっても、その舞台を実際訪れることでこうした新たな発見がある。これが物語の舞台を訪れる最大の魅力と言えるだろう。この魅力はアニメや漫画作品に限らず、実写ドラマや司馬遼太郎作品をはじめとする歴史モノなど、全てに通じるものだろう。

 こうした物語の舞台を旅することを地域振興に結びつけようとする動きが、ここ10年ほどで盛んになっている。特にアニメや漫画、ゲームの世界では「聖地巡礼」と呼ばれている。宗教上重要な場所に信徒が旅して詣でる聖地巡礼に由来した言葉で、若者たちが自分の好きな作品をどれだけ大切に思っているかを表した言葉とも言える。

 既に歴史探訪などを目的とした旅行では、さまざまな旅行プランが組まれているが、「聖地巡礼」でもこうした動線作りの策定が現在進められている。特にアニメや漫画の場合は海外からの人気も高く、海外からの観光需要を見込めるからだ。

 新型コロナウイルスの影響ですっかり下火となってしまっているが、例えば漫画「SLAM DUNK(スラムダンク)」の舞台の一つ、神奈川県鎌倉市にある江ノ島電鉄・鎌倉高校前駅前の踏切に大勢の中国や台湾からの観光客が訪れている様子が話題になった。

 外国人観光客を主な対象に、日本全体の「聖地」をリスト化する動きもある。一般社団法人アニメツーリズム協会が実施している「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」だ。四国八十八カ所巡りにちなみ「88」という数字が振られているが、この上限にとらわれずに各地の作品の舞台やゆかりの場所をリストアップしている。その中には、先述の「長谷川町子記念館」も含まれている。

海外から日本の「聖地」を訪れる動きとは逆に、日本人が海外の舞台に行く動きもある。有名なものとしては、1974年に放送されたアニメ「アルプスの少女ハイジ」で描かれたスイスのマイエンフェルトだ。スタジオジブリの故・高畑勲監督の代表作で、制作にあたっては実際に宮崎駿監督と共に現地をロケハンした作品として知られる。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ