ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、トランスジェンダーの選手について。

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 LGBTQを公表している選手の数が過去最多だったという先の東京五輪。中でも女子重量挙げのニュージーランド代表に、トランスジェンダーの女性選手(ローレル・ハバードさん・43歳)が出場し話題になりました。彼女は、30代の時に性別適合手術(いわゆる「性転換」。今風に言うと「性移行」)を受けて女性になった人です。他にも、性移行はしていないもののトランスジェンダーであることを明かしている女子サッカー選手もいました。

 男性から女性に性移行したアスリートの女子スポーツ競技への参加には、いまだ多くの批判や懐疑の声が聞かれます。現在は列記とした女性であるハバード選手についても、過去に「男子重量挙げ」の選手として活躍していたこと、30歳を過ぎてからの性転換だったことなどから、例え男性ホルモン濃度が「(IOCが定める)基準値」を下回っていても、それまで生きてきた上で培われた「男性としての特性(骨格や筋力など)」が、「生まれつき女性」のアスリートより有利に働く可能性があり、「不公平だ!」と言われているのです。

 中でも「重量挙げ」というのは極めて「肉体系」の競技であり、しかも彼女は「元男子選手」だった。それら複数の要素がこの問題をより複雑にしているように思います。「走る」「泳ぐ」「飛ぶ」「投げる」「持ち上げる」系の競技において、ほぼすべての世界記録は男性によって樹立されたもの。「男には勝てない」というのは、多くの女性アスリートの中に刷り込まれている揺るぎない「現実」であり、やはり女性アスリート側からすれば、「元男性」が参戦してくることに危機感を覚えるのも分からなくはありません。

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