厚生労働省の検査班に聞くと、検査センターなど医療機関以外で行った自費検査の結果は、「陽性者数も検査数も行政に報告する義務はない」という。
「検査を提供する前、受検希望者に対して、検査結果が陽性だった場合には提携する医療機関などを受診することを誓約させることになっています。なので、あらかじめ検査センターなどには、提携医療機関を紹介できる体制を整えるようにしてもらっています」(厚労省)
陽性者は医療機関を受診し、医師が新型コロナの診断をした時に発生届を保健所に提出することが義務になっている。それにより、陽性者の数がすくい上げられる、という仕組みなのだ。
横地さんはこう指摘する。
「検査人数を報告しなくてもいいため、自由診療から上がってくる陽性率は計算上100%にもなりえます。そこに行政検査(民間の検査機関や医療機関など)の陽性者数を足し合わせるため、数字が跳ね上がることがあるのです。行政がどう考えるかにもよりますが、今後は、行政検査と自由診療とを分けていくことも検討した方がいいかもしれません」
自費検査を受ける人は、「陰性証明書」の発行を目的とする人が多く、発熱などの症状がないケースが大半だ。そのため、検査人数に対する陽性率は総じて低いと推測されるという。
ただ、第5波の爆発的な感染拡大により、保健所や医療機関が逼迫しているなか、ちょっと熱がある人も自由診療に流れている可能性がある。その場での感染のリスクも拭いきれない。
陽性率は、地域にどの程度感染が広がっているかを知る手掛かりとなり、警戒基準のステージを判断する重要な指標の一つでもある。実態を反映した数値を計測する仕組みが求められる。
(AERA dot.編集部・岩下明日香)