陽性者については、自宅療養の判断や医療機関につなぐなど、市の保健所が経過をみる仕組みになっているため、市に報告が上がってくる。だが検査人数が報告されない場合、検査人数を「ゼロ」とみなして陽性率を計算するため、結果として実態よりも高くなる、というわけだ。
さらに、川崎市特有の事情もあるようだ。
「市内で自費検査を行うあるクリニックが、同系列のクリニックを市外にお持ちであるにもかかわらず、発生届をすべて川崎市に提出している、ということがありました。市外のクリニックで判明した陽性者は、8月に入ってから約50~160人以上います」(同)
そこで市は17日掲載分から、陽性率の算出方法を改めた。
「川崎市外での検体採取によって確認された陽性者数を除いて算出することにしました」(同)
あくまでも、陽性率を算出する時だけ市外の人数を除き、陽性者数としては発生届を受けた自治体として川崎市の人数にカウントするという。だが新しい算出方法で計算しても、川崎市の直近1週間の陽性率は42.9%と依然として高い。それは先に述べた「タイムラグ」と「検査人数未報告」の影響が大きいというのが市の説明だ。ちなみに、市外の人を含めた従来の計算方法での陽性率は54.9%だった。
行政検査以外の検査人数の把握が困難なのはなぜなのか。検査を担う「臨床検査技師」が所属する日本臨床衛生検査技師会の横地常広副会長が説明する。
「民間の検査には、医療機関で行う保険点数がつくものと、検査を専門で行う保険適用外の自由診療による自費検査があります。自由診療であっても都道府県の承認を得る必要があるのですが、新型コロナのPCR検査に関しては、検査数を増やしていくことがしきりに言われてきたこともあり、承認審査が少し簡易化され、許可を得やすい状態になっています。仕事の都合や帰省する時に陰性証明書が欲しいという人向けに、自費検査ができる検査センターが全国的に増えていきました」