「ハリウッドではバーンとこうやってキックしたんだよ。あそこまで真剣に格好よくやれるやつはいないと、認められたんだ」

 目を輝かせて話していたが、話が自身の懐事情に及ぶと、声が小さくなった。

「俺、営業でホテルなどを回れば、地方では1日で100万、200万円と稼げる。しかし、そのうちまた営業がくると思って稼いだお金をすぐ使ってしまう。みんなに迷惑かけてしまうんだな」

 千葉さんの最初の妻は、女優の野際陽子さん(故人)で、結婚した時は、大きく報じられた。その後、離婚したが、こう懺悔していた。

「結婚した頃はたくさん稼いだ。けど、あっという間に使ったな。彼女にもすまないことをした」

 そんな千葉さんを取り巻きはこう評していた。

「役者バカ。いつも気持ちいいこと言ってすり寄ってくる人を信じてしまう」

 千葉さんに意見を聞いたところ、「役者バカ、その通りだな」と天を仰いでいた。

 その後も、金銭トラブルから「破産か」などと報じられることもあった。千葉さんは「ハリウッド映画の肖像権がある。それを買ってくれる人はいないか」と私によく話していた。

 しかし、周囲から「その話には乗らないでください。金銭トラブルの多くが肖像権に絡んだもの。本当に肖像権があるか、よくわからないのです」とたしなめられた。

 5年ほど前、久しぶりに千葉さんの東京都内の自宅を訪ねた。インターホンを押すと、ラフな格好の千葉さんが出迎えてくれた。

「おおお、久しぶりだな。話って? お茶でも飲もう、ちょっと待ってくれ」

 1時間近くして出てきた時は、ジャケット姿で髪もセット。千葉真一というスターのオーラたっぷりだった。千葉さんが以前、私に送ってくれた色紙が手元に残っている。「武士乃道」と書いて、「もののふのみち
」と読むという。

「役者道は武士道に通じる。武士は徹底して腕を磨く。俳優は肉体を磨く」と力説していた千葉さん。

 新型コロナウイルスに感染する直前まで「まだまだ映画をやれる体力、気力十分」と語っていたという。ご冥福をお祈りいたします。

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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