「無理な真似をしたり不自然な行動をすれば、必ず悪い結果を身の上に受けぬばならぬに極っている」

 自分を知った上で、自分に見合った行動を取る規範を栄一は薦めています。一方で、「不自然な行動をしない」、つまり、「自然体」とは何もしない受け身の状態ではないということもポイントです。

 むしろ活き活きと生きることが天命です。草木は草木でも活き活きとしたほうが天命を全うしているでしょうし、鳥獣もそうで、人も同じでしょう。

 私の友人で長年応援している鬼丸昌也さんというNPOの創設者がいます。2001年、大学4年生だった鬼丸さんはカンボジアに訪れ、地雷被害の悲惨さを自ら知りました。そして、帰国後、自分の一人部屋でテラ・ルネサンスを設立します。

 カンボジア・ラオスでの地雷・不発弾除去支援、被害者の生活再建から始まり、ウガンダ、コンゴ民主共和国、ブルンジでの元子ども兵、性暴力被害者の社会復帰など、紛争によって苦しみを抱えた人々・地域の「自立」を促進するように事業を展開します。特にウガンダでは16年間で208名の元子ども兵の社会復帰を支援しています。結果、支援前の平均月収が128円だったものが、支援後には約7008円に向上。元子ども兵と近隣住民との関係も支援後には、対象者の78%が改善するなど、素晴らしい実績を上げています。

 20年前に大学生であった鬼丸さんの行動を見た周囲は、己に見合っていないと冷ややかに思っていたかもしれません。遠い国の多くの人々に、日本にいる大学生が何をできるのかと。

 しかし、鬼丸さんの20年の実績を見ると明らかなことがあります。己の心のささやきに活き活きと忠実に動いたことによって、鬼丸さんはご自身の天命に反するどころか、しっかりと全うしているのです。

 鬼丸さんが己の天命に全うしているからこそ、世の中で多くの笑顔が生じました。それは支援先の現地ではもちろんのこと、支援元である日本でもそうです。

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天命のドラマとは?