NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。渋沢家五代目の渋沢健氏が衝撃を受けたご先祖様の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。
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地球が拳を上げているのでしょうか。永遠に晴れない靄のようなコロナ禍。日本列島を襲った記録的な豪雨。ハイチの大地震と台風。そして、アフガン情勢。世界中の多くの人々が苦難や悲劇に陥るニュース画面から次々と入ってきて心が痛みます。人類の冒とくに対して、まるで天罰が人間社会へ下されているようです。
およそ2500年前に、孔子はこのような言葉を残しています。
「罪を天に獲れば、祈るところなし」
もし天から罪を受ければ、どの神に祈っても無駄だ。
イメージ的に「天」とは神様であり、神様がお怒りである。だから人々は処罰されている。我々は天からの処罰を受け続けするしかないのでしょうか。ますます憂鬱な気持ちに陥りそうです。
ただ渋沢栄一は、「私は天とは天命の意味であると信じている」と孔子の訓を解釈しています。
「天の命令」と聞くと中世の十字軍や現代の原理主義テロリスト等、多くが血を見るシーンを連想してしまいます。ただ、栄一がここで言う天命は違います。
「人間が世の中に活き働いているのは天命である、草木には草木の天命があり、鳥獣には鳥獣の天命がある」
「同じ人間のうちには、酒を売るものもがあったり、餅を売ったりする者があったりする」
「草木はどうしても草木で終わねばならぬもので、鳥獣に成ろうとしても成りえるものではない」【「論語と算盤」天は人を罰せず】
要は、己を知れということを渋沢栄一は指摘しています。そして、己を知った上で、自然体な状態が好ましいという意味も含まれているようです。「天命」とは、「自然」と解釈しても良さそうです。
「されば孔子が曰れた『罪を天に獲る』とは、無理な真似をして不自然の行動に出ずるという意味であろうかと思う」