阪神園芸は68年に設立され、79年から甲子園の整備を担当。プロ野球では二軍の阪神鳴尾浜球場や楽天生命パーク宮城の土エリア、ほっともっとフィールド神戸などの整備も任され、甲子園球場外壁のツタの管理にも関わっている。

 世間的な注目を集めたのは17年のクライマックスシリーズ阪神vsDeNA戦。10月15日の第2戦は前日からの雨により1時間3分遅れでプレーボール。試合中も雨が止むことはなく、速乾性の砂を毎回のように入れるなど必死の整備で試合終了にこぎつけた。そして翌日の雨天中止を挟んだ同17日も昼まで雨が降り続いたが、完璧な状態で試合を迎えた。

「選手、関係者の間で阪神園芸の技術は昔から知られていた。マスコミが取り上げ始めたのは17年のCSあたりから。球児が持ち帰る『甲子園の土』は有名でしたが、グラウンド整備の技術力も注目されるようになった。試合中の整備を楽しみにしているファンも多いそうです」(阪神担当記者)

 和田豊や福原忍は引退セレモニーで球場と阪神園芸への感謝を口にしている。鳥谷敬(現ロッテ)は阪神在籍最終戦の練習前、長年守ったショートの定位置で阪神園芸スタッフと記念撮影をした。また、雨の影響で開始が遅れたり試合中断した時には、SNS上を通じ阪神園芸の動向が間でシェアされることもあるほど。それほど阪神園芸は選手やファンに認知され、感謝される存在となっている。

 地球温暖化が原因とも言われる異常気象が続く。考えられないほどの酷暑や今回のような雨天順延があると、甲子園開催の是非が取り上げられる。暑さ対策や体調、日程面など問題は多いが、そこはテクノロジーなどを有効活用するなど大人の努力でカバーすべき部分だ。

「甲子園に屋根をつけろ」などという意見も目にするが、本来野球は空の下でおこなうものだ。眩しいほどの太陽光、心地良さと潮の香りを運んでくれる浜風。時折いたずらのように降り出す雨。五感すべてで楽しめるのも甲子園の良さである。そして天気が崩れた時は、阪神園芸の「神整備」を見られるのも魅力の一つではないか。