■より分配を意識する
税制においては、高所得者層と中間層、低所得者層の間で適切に分配が行われているのだろうか。所得が1億円を超えると税負担が下がる「1億円の壁」が指摘されてきました。住宅や教育の負担は中間層が最も大きいとの指摘もあります。欧米では、新築だけでなく賃貸や中古住宅の流通でも中間層を中心に支援しています。日本でもそうした切り口から支援することも考えられます。高等教育においても、(学費を所得に応じて後払いする)オーストラリアの「HECS(高等教育拠出金制度)」も導入したらどうか。
──アベノミクスでは、豊かな者が富めば貧しい者にも富が滴り落ちるという「トリクルダウン」が言われていました。
アベノミクスだけじゃなくて、小泉政権時代の新自由主義、経済対策が成長という意味では、大きな意味があったと思います。ただ、トリクルダウンは起きると言ったけれど、少なくとも今はまだ起きていない。新型コロナで格差が大きくなったんだから、より分配を意識しないといけません。
──自民党の長年の政策を変えるということですか。
いや、自民党は経済の成長をリードした点では大きな役割を果たしたと思います。分配するものもつくらずして分配と叫んでも、国民は誰もついてこなかったというのが今の野党のありようです。自民党が分配を言ってこそ、具体的な結果につながると信じています。
──「自助・共助・公助」を掲げる菅首相への対抗ですか。
菅さんとの対立軸ということで政策を考えていません。自助という考え方は大変重要な考え方だと思いますが、私たちはコロナ禍の中で改めて家族や仲間の協力や絆の大切さを痛感しました。お互いに助け合う社会、温かみのある社会、友情や協力の温かさを感じられるような社会もしっかり目指していかなければいけないと思っています。
(構成/朝日新聞政治部・笹井継夫)
※AERA 2021年8月30日号より抜粋