玄関の前に着くと、お香のいい香りがどこからともなく漂ってきました。非日常的なその雰囲気にドキドキしながらインターホンを押し、玄関の扉を開けると……。
そこには、70歳近い年齢を感じさせない、女優のように美しい先生が立っていました。
目がキラキラと輝いていて背筋もスッと伸びていて、「こんなに美しい方がいるんだ!」と心の底からビックリしました。「どうやったらこんなふうに歳を重ねられるのだろう?」と衝撃を受けました。
その書道教室は、元は料理教室をしていた先生のお手製のお料理を味わい、会話を楽しみながら、かな文字書道をたしなむ場所。とにかく「五感」が喜ぶ空間です。
お香のいい香りに包まれて、美しい和室で墨を静かにすっていたとき。
「こんなに、幸せな気持ち、久しぶりだな……」
次第に、ずっとふたをしてきた「感じる」ことを楽しむ感覚がゆっくりじわじわと、よみがえってくるのがわかりました。一筋の光が差してくるような不思議な感覚でした。
「私は今まで理性が強くなりすぎて、『感じる』ことを忘れていたんだ」
自分の「感覚」を「信じる」。これこそが本当の、「自信」なのかもしれない。
「こうしなきゃいけない」「こうするべき」という理性で自分を押さえつけてきたことに気づいた、衝撃的な出合いでした。
その帰り道、ふと胸が「ふわっ」と温かくなるのを感じました。
言葉では言い表せないものの、先生が私に対して温かい想いを寄せている「愛」をはっきりと感じました。
「いつでもこの感覚を自分自身に向けられたら、なんでもできるんじゃないか」と力が湧いてくるのを感じました。
今まで、「頭」ばかり使って自分探しをしてきたけれど、これからは自分の「感覚」をもっと大事にしよう。
そう思えた日から、私の人生はどんどん変わっていきました。
■心の中にいる「もう1人の私」の声を聞く
まず、「会社員を辞めて何がしたいのか?」という迷いが消えました。
頭では「言い訳」をいくらでも考えられましたが、「感覚」では「自分の可能性に挑戦したい」と明らかに感じていました。