打撃不振の大山悠輔を辛抱強く使い、2カ月以上白星から遠ざかり、後半戦も本来の投球に程遠いエースの西勇輝を先発ローテーションから外さない。主軸の丸佳浩が精彩を欠いていると見るや迷いなく2軍に落とすなど、主力を特別扱いせず「結果至上主義」の原監督とは対照的に映る。

 16年ぶりのリーグ優勝を狙う阪神だが、勝負強さに不安が残る。巨人との直接対決に弱く、12年から9年連続カード負け越し。昨年も巨人戦で8勝16敗と大きく負け越している。悪夢として阪神ファンの脳裏に刻まれているのが08年だ。開幕から首位を快走し、7月9日の時点で同率2位の巨人、中日に最大13ゲーム差をつけていたが、腰痛を抱えていた新井貴浩が北京五輪に強行出場して患部の症状が悪化。後半戦に長期離脱して得点力が半減すると苦しい戦いが続く。猛追する巨人に「メイクレジェンド」と形容された劇的な逆転優勝を許し、岡田彰布監督は辞任に追い込まれた。

「巨人、ヤクルト、阪神の混戦は続くでしょう。勝負を分けるのは監督の采配力です。矢野監督は勝利に徹して非情にならなければいけない部分も必要になってくる。選手に寄り添う姿は素晴らしいですし結束力を高める上でも大きな魅力ですが、優勝するためには選手に嫌われてでも勝利に執着する采配が求められます」(スポーツ紙記者)

チームを立て直し、矢野監督は名将になれるか――。(牧忠則)

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