私の個人的出来事と台風と9.11、全てが重なって忘れろといわれても忘れられない一日だった。悪いことは全て重なる。いいことも重なるが、悪いことの方が私の経験からすると重なって起きる。

 その後の対テロ戦争は、十年前の、テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンの殺害をはさんで二十年続き、ようやく終わった。しかしアメリカの支援を受けた政府はもろくも崩壊、再びタリバンの支配にもどった。

 ということは何を意味するのだろうか。

 民主国家をつくるというアメリカの「中東民主化構想」は、中東の混乱に乗じた一種の植民地主義ともいえると、朝日新聞の解説にもあった。かつてソビエト支配下でオサマ・ビンラディンらに武器を供与したのはアメリカという事実から見ても、大国のその時々の御都合主義が見てとれる。

 カイロに半年暮らした経験からすると、全く価値観の違う文化を理解せずに、民主化など、大国の主義を押しつけることは出来ない。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

週刊朝日  2021年9月17日号

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