下重暁子・作家
下重暁子・作家
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※写真はイメージです (GettyImages)
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 人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、アメリカ史上最長の戦争について。

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 アメリカ軍のアフガニスタン撤退が終わった。二○○一年から二十年というアメリカ史上最長の戦争というが、なんとあっさり終わってしまったのだろうか。八月三十一日の撤退期限を前に、三十日に撤退が早々と終わったのは、テロを恐れてのことだったのか。

 残された人々についてはこれからタリバン側との交渉になる。日本も自衛隊機を派遣したが国外退避できたのは日本人一人とアフガン人の十数人。課題が残された。

 なぜこんなにだらだらと長く続いた挙げ句、再びタリバンの支配下にもどった形で終わったのか。いったいアフガンの戦争は何だったのか。

 二○○一年の九月十一日、私は今と同様、軽井沢に滞在していた。台風が日本列島に近づいていて、雨が激しく降る夜、友人宅でバーベキューハウスを楽しみ、自宅へもどり深夜トイレに起きて愕然とした。痛みはないのに、便器が真紅に染まっている。

 一体何が起きたのか、しばらくして痛みが出て、その経験から膀胱炎と判断し、翌朝早々に軽井沢病院へ。点滴をしてようやく収まり、専門医によると、冷えによる激しい膀胱炎との診断で抗生物質をもらってしばらく様子を見ることになった。

 その頃には台風は上陸し、軽井沢も暴風域に入るかもしれないとのこと。つれあいの母(当時八十五歳)も一緒だったので、大事をとって、ホテルへ避難した。

 チェックインをすませ、部屋に入り、テレビをつける……と、画面に映ったのはアメリカ・ニューヨークの中心にあるワールド・トレード・センターに旅客機が突入して燃えあがった瞬間! 次いでもう一つのビルにもほかの旅客機が!

 これは何? 誰もが映画の一シーンとしか思わなかった。アメリカ同時多発テロの始まりだった。

 イスラム過激派テロリスト集団によるアメリカ合衆国への攻撃は、その後ペンタゴンなどに及び、連邦議会議事堂も標的だったという。

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