岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年から現職(撮影/楠本涼)
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年から現職(撮影/楠本涼)
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 高齢者へのワクチン接種が進んで相対的に新規感染者の年齢が若くなり、子どもの感染も増えている。夏休み中には部活や塾などでのクラスターも発生した。子どもたちを守るためにはどうすればいいのか。AERA 2021年9月13日号で、岩田健太郎医師が語る。

【子育て中の親たちが回答】落ち込む、困る…コロナ禍でのメンタルはどう?

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――全国の3分の2以上の都道府県が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置にある中、新学期を迎えた。一方、学校単位でのパラリンピック観戦も行われ、千葉市では引率教師の感染がわかり、その後の観戦をとりやめた。

「安心安全な観戦」と言いますが、必要のないリスクはとらないのが一番「安全」です。競技場の多くは感染爆発の起きている首都圏にあります。山火事が起きている山に遠足に行くようなものです。子どもたちをリスクにさらす冒険はするべきではなかった、というのが僕の考えです。パラ観戦に行った学校は、修学旅行も行うのでしょうか。修学旅行などいろいろな行事を延期・中止しているのに、なぜパラ観戦には行くのか。

■パラ観戦はナンセンス

 いま全国各地で、感染爆発により医療崩壊が起きています。少しでも医療への負荷を減らすために大幅に人流を減らす必要があると、政治家たちは国民に日用品の買い物回数すら減らすよう求めています。そんな中で、子どものパラ観戦という集団行動がなぜ許されるのか。極めてナンセンスです。政治家や自治体責任者の意思決定の基準がブレまくっている。矛盾したメッセージは国民を混乱させ、趣旨が届いていません。

――新学期早々、臨時休校とした学校もある。

 科学的にみて、休校は地域の感染流行を抑える一つの選択肢です。ただし、昨年2月に安倍晋三前首相が唐突に打ち出した全国一斉休校は単に大混乱を招いただけで、感染対策上は意味がなかったと僕らは分析しています。当時、子どもはほとんど感染していなかったからです。

 高齢者へのワクチン接種が進み、相対的に子どもも含めて若い世代の感染が増えています。いままん延しているデルタ株が、とくに子どもに感染しやすくなったのかどうかはまだわかりませんが、年齢を問わずに感染が広まりやすくなったのは確かです。国内だけではなく海外のデータも見て、デルタ株に合った方針を決めるべきです。

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