大会組織委員会は、本誌の取材にこう回答した。

「観客席の一部は大会関係者の待機場所となり、密の回避に活用されました」

 だが、五輪会場問題に詳しい建築エコノミストの森山高至さんは、何とか生かす方法を考えるべきだったと話す。

「運営側からすれば、無観客が決定するまで工事を止めるわけにはいかなかったという事情はあったと思います。しかし、無観客になったとしても、観客席の何カ所かにウェブカメラを設置し、ネットで見られるバーチャル観客席のようなものはできたはず。そしてそれをサブスクリプション(定額制配信サービス)で提供すれば、観客席はまったく無駄にならず、収益にもつながったはずです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年9月13日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら