COP27の閉幕会合で、議長を務めたシュクリ・エジプト外相(中央)
COP27の閉幕会合で、議長を務めたシュクリ・エジプト外相(中央)

「特に地球温暖化や海面上昇といった環境問題は、地球上の誰もが当事者であり目を背けることができない問題です。そうした緊迫感が、環境のためならば手段を選んでいられないという考えに結びついている」

 心配なのは抗議活動のさらなる過激化だ。間接的ではあるが、人的被害が出たケースもある。

 10月31日朝、独ベルリンで自転車に乗った女性がミキサー車にひかれ、下敷きになる事故が起きた。消防は重い障害物を除去する特殊車両の派遣を要請した。だが当日は前述の「最後の世代」が道路を封鎖して渋滞が起きていたため車両の到着が遅れ、女性は亡くなってしまう。

 シュタインマイヤー大統領は「最後の世代」の活動が救助の遅れにつながった可能性は否定できないとし、「気候保護への幅広い支持に疑問符がつく」と懸念を表明。ドイツ国内で非難が噴出した。

「事故前にドイツの公共放送が実施したアンケートでは『最後の世代』への支持を表明したのは2割ほどで、事故によって支持率はさらに低下していると考えられます。しかし、要求が受け入れられなければ彼らの抗議活動は続き、それだけ不確定要素も増えます。警察や市民との衝突が激化すれば、より過激な行動となって偶発的に死者が出る事態に発展する可能性もあります」(浜野氏)

 期せずして日本でも最近、抗議活動に関心が集まる出来事があった。

「2ちゃんねる」の創設者で実業家のひろゆき氏が沖縄県名護市の辺野古にある米軍キャンプ・シュワブゲート前を訪れ、抗議日数を示した掲示板の前で撮った写真と共に「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」と投稿。これが波紋を呼び、「座り込み」の定義から、そもそも「座り込み」に意味はあるのかという議論にまで発展した。

「ひまわり」にトマトスープを投げつけた「ジャスト・ストップ・オイル」の広報担当者は抗議後、こんな声明を発表した。

「私たちは道路に座り込んでみようとしたり、石油ターミナルを封鎖しようとしたりしました。しかし事実上、ほとんど報道されませんでした。一方、極めて多く報道されたこと、それは傑作を覆っているガラス片にトマトスープを投げつけたことだったのです」

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