ところが、ちょうどこのとき、谷博球審が約2メートル横にいたことが、思わぬトラブルを誘発する。谷球審は後ろを向いていたので、返球の瞬間を見ていなかったが、吉本文弘三塁塁審の「球審に向かって投げた」の指摘を受け、審判への侮辱行為として退場を告げた。

 山本浩二監督がベンチを飛び出し、激しく抗議したが、却下。この日は巨人有利の判定が相次ぎ、広島は何度も苦汁をなめていた。高橋が腹いせに投げたのではないかという憶測も飛び交い、98年に巨人・ガルベスが球審にボールを投げつけた事件と結びつける報道もあった。

 高橋自身に判定に対する不満がまったくなかったとは思えないが、フワッとした感じで返球しており、明らかに審判を狙って投げたガルベスと同列に論じるのは、やや無理がある。連盟の処分も、ガルベスがシーズン残り2カ月の出場停止処分を受けたのに対し、高橋は厳重戒告と制裁金10万円だった。

 ボールではなく、ヘルメットが災いして退場処分を受けたのが、ヤクルト・佐藤真一だ。

 00年6月15日の広島戦、3点を追う9回無死、代打として登場した佐藤は、三塁へのゴロ。一塁は際どいタイミングながら、渡田均一塁塁審の判定は「アウト!」。悔しがった佐藤は、思わずヘルメットをグラウンドに叩きつけた。

 ところが、よりによって、跳ね返ったヘルメットが渡田塁審に当たったことから、侮辱行為で退場を宣告されてしまった。

 審判の近くでボールやヘルメットを投げる行為は、くれぐれも要注意だ。

 退場に相当する悪質なヤジを飛ばした選手が見過ごされた結果、疑心暗鬼が高じて、退場になったのが、西武時代のマルティネスだ。

 98年5月19日の日本ハム戦の8回、芝草宇宙から右膝に死球を受けたマルティネスは、ヘルメットを叩きつけると、同僚・ペンバートンの制止を振り切ってマウンドに突進。逃げる芝草を右中間まで追いかけ、退場処分になった。

 日本ハム・上田利治監督は「あと味が悪いトラブル。怒るほどのボールやないのに」と不機嫌に吐き捨て、西武・東尾修監督は「ふだんおとなしくて温厚なマルちゃんがこれほど怒るんだから、ひどいことを言われたんだよ」と庇った。

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マルティネスが怒った“ごもっともな理由”