松坂:引き算なんですね。

古田:そう。ときどき「カーテン開けてから喋った方がいいですか? 閉めてからがいいですか?」とか聞く俳優がいるけど、「どっちでもいいわ!」って。

松坂:あははは。さっきから誰のこと言ってるんですか(笑)。

――娘の無実を信じるが故に暴走し、青柳をはじめ周囲を総攻撃する添田について、こう語る。

古田:添田は作品の宣伝においては「怪物」っていう打ち出し方になっていて。確かに青柳だけでなく、娘が通っていた中学校、車で娘を轢いた加害者とその母親、青柳をかばうスーパーの店員・草加部と、いろんな人を責める。話が進むにつれてそれぞれとの関係性は見た目には変わらないんだけど、添田の心情的には少しずつ変わっていく。表立って変化を表現したくはないから、何かしら心が動いてるのを観ている人が感じてくれればいいなあ、ぐらいのことしかやっていない。怖がらせるのも、何もせず無表情でこちらを見てる人が一番怖い。だから、スーパーの外から青柳を見る時もそうしていました。眉間に皺を寄せたりするのは野暮ですよね。

松坂:スーパーの外に立ってこちらを見てる古田さんは怖かったです(笑)。「わ、またいる! もうやめてほしい」という気持ちになりました。僕は後から現場に入ったんですが、その時すでに古田さんがロケ場所の蒲郡の空気をまとっていたのも怖かったです。

古田:添田は居丈高に行くキャラで、そこで青柳が本当に嫌そうに怯える。そうするとさらに拍車がかかる、という。

松坂:添田が青柳を追い込むほど耐えるしかなくなってくるので、こちらも助かりました。

古田:添田をさらに怒らせたくないもんね(笑)。

松坂:はい(笑)。でも、青柳がそう思うほど添田は怒っていく。どんどんはまっていく感じがありましたね。

■作品のリアリティー

――松坂は自らの意思を表に出さず、じわじわと追い込まれていく青柳を、どう感じたのか。

松坂:僕は台本を読んでまず、古田さんとしのぶさんに挟まれる現場を想像して、「ああ~っ」てなりました(笑)。

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