
中学生の娘の死をきっかけに、父はモンスターと化していく──。9月23日、映画「空白」が公開される。古田新太と松坂桃李は実写初共演だ。AERA 2021年9月20日号から。
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――映画「空白」は、不寛容な社会に追い詰められていく人々の姿を描く。スーパーで万引きを疑われ、店長に追いかけられ車に轢かれて亡くなる女子中学生の父・添田を古田新太が、スーパーの店長・青柳を松坂桃李が演じた。
松坂:まだこの仕事をする前の学生時代、「木更津キャッツアイ」で古田さんを知ったんです。古田さんが演じたオジーに毎回笑わせてもらっていて。それでこの仕事を始めて徐々に、独自のポジションを築き上げている唯一無二のすごい方なんだということを知っていきました。
古田:オジーと、あとちょっとしか出てないのに「池袋ウエストゲートパーク」のヘビーEはいまだに言われるね。オイラは桃李はいろいろな作品を観て、フラットな状態で作品入りするんだろうなと思ってたんだけど、今回「やっぱり!」って思った。
松坂:作品の舵を切るのは監督なので、その指示にちゃんと従うことで作品に役をはめられると思っているんですよね。
■一発目から全力でやる
古田:監督の言うことを聞くのは、俳優として一番良い要素だと思います。桃李自身がやっぱりそう考えているとわかって今ホッとしましたね。オイラは自分でいろいろ工夫したり、「監督、もう一回やらしてください!」っていう俳優が苦手なんです。
松坂:誰に向けて言ってるんですか(笑)。
古田:監督が言った通りにやれば早く撮影も終わるし(笑)。
松坂:「空白」の現場は巻きましたからね(笑)。
古田:「もう一丁!」って、もっと良い芝居が出てくるのを待つ監督もいますけど、最初の芝居が一番良い。今回のキャストは(寺島)しのぶちゃんも、(片岡)礼子ちゃんも、みんな全力で一発目からやるし、下手がいなくて良かった(笑)。オイラは一応最初に「これが一番やりすぎだろう」っていうところから出しますけど、「やりすぎ」と言われたらやめるスタンス。「もうちょっとこうして」と言われない俳優を目指してます。